2015/10/10

備忘録:初期型トリシティ125のエンジン周りあれこれ &BLUE COREエンジンについて少々

※注・2016年11月16日現在
この投稿は、2014年から2016年にかけて販売された、
日本仕様車部品番号検索で言うところの2015年度型と2016年度型、
つまり初期型トリシティのエンジンについての備忘録・考察です



2016年、ヤマハの125ccスクーター各車種のエンジンは、
続々とBLUE COREタイプへの更新がおこなわれた

ヤマハ発動機の公式リリースによれば、
単に燃費および出力を改善・向上させただけではなく、
比較的容易にバリエントを生み出せる設計となっているようである

2016年第4四半期時点では、125cc空冷型、
および125cc・155cc水冷型の2種に大別される

空冷型は、いわゆるアイドリングストップ機能を付与したタイプが存在するのが特徴で、
主にASEAN地域向けの製品へと搭載されている
普及価格帯の車種はもちろん、従来は水冷エンジン搭載だった車種に適用された例もある

水冷型は、吸気バルブリフト量の可変機構、VVAを備えた4バルブヘッドが特徴だ
NMAX兄弟やトリシティ155はもちろん、2017年型トリシティ125へも採用された
参考:当ブログ投稿
速報?・次期型トリシティ125 &近況報告



では初期型トリシティ125のエンジンは、というと、
BLUE COREタイプの1世代前のもので、技術的には過渡にあたる

2015年型以前のASEAN地域向けスクーター、
GT125 や AEROX 125 LC などに搭載されていた水冷エンジンをベースとして、

・吸排気経路のレイアウト、特にエアクリーナー位置の変更
・右サイドプレート追加と、リアサスペンションのツインショック化
・ディスクブレーキ化
・キックスターターの廃止

などを施したタイプだ
一部の貿易・通信販売業者がキックスターター追加キットを供給しているが、
これは上記車種などからの純正部品流用である

ローラーロッカーアームや、
総アルミ合金製・スリーブレス・めっきレスのDiASilシリンダーなど、
後のBLUE COREエンジンに盛り込まれる要素を先駆けて採用している



前置きが長くなったが、本題に入る

初期型トリシティ125のクラッチ接続・解放速度は、新車時のメーター読みで15km/h
加速時はスロットル開度を一定に保つと15km/hと少しで繋がり、
減速時は15km/hで切れる

回転数に対する車速は、後輪の円周を1.58mとし、
変速比下限と上限、その間は0.5の倍数ごとに計算すると以下のとおり

Primary R.G.Ratio : 1.000
Secondary R.G.Ratio : 9.533
rpm\T.Ratio 2.361 2 1.5 1 0.794
3000 13km/h 15km/h 20km/h 30km/h 38km/h
4000 17km/h 20km/h 27km/h 40km/h 50km/h
5000 21km/h 25km/h 33km/h 50km/h 63km/h
6000 25km/h 30km/h 40km/h 60km/h 75km/h
7000 29km/h 35km/h 46km/h 70km/h 88km/h
8000 34km/h 40km/h 53km/h 80km/h 100km/h
9000 38km/h 45km/h 60km/h 89km/h 113km/h

発進時、半クラッチ状態となるまでに少しハイレシオ側に変速し、
クラッチが繋がるにつれてトルクカムが作用して、
改めてボトムレシオ側へ変速されるVベルトCVTの特性を考えると、
およそ3000rpmから4000rpmの間でクラッチが接続されているようだ

カタログ上の最高出力点が9000rpmなのに対し、
実際には8000rpmでレブリミッターが作動すると目されている
8000rpmで目一杯ハイレシオ側に変速すると、ちょうど100km/hとなる
おそらくはスピードリミッター代わりなのだろう
車速に応じて最高回転数を変えるような手の込んだ制御が為されているのでなければ、
加速中も8000rpm以上の回転数は使っていないということになる

ちなみに最大トルク発生点は5500rpm
平坦地での60km/h巡行時には、
この回転数の前後を使うセッティングとなっている



そんなにピーキーな出力特性のエンジンとは思えないので、
仮に社外品のECUなどでレブリミッターを解除し、
ウェイトローラーや各スプリング諸々も変更して再セッティングをしたところで、
大して加速力は向上しないだろう

プラセボレベルのメリットと引き換えに、耐久・信頼性と財布の中身を失った挙句、
無駄にうるさい盆栽が出来上がるのがオチだと思う

どうせ作るなら良く手入れされた盆栽、
より直截に言うと優れたカスタム車を目指そうぜ・・・
例えば、クラッチ接続から60km/hまでは限りなくニアに9000rpmをキープして、
巡行に移ったら純正同様に5500rpm前後へ収まるようなセッティングをだな・・・ 

あ、レース用のエンジンを仕上げるときは話が変わるから注意ね
効果がプラセボレベルでも、きちんと検証したうえで、
細かな改修を積み重ねていくのは重要だよ



出力そのものは吸排気系と燃調をいじればある程度は上げられるだろうが、
触媒の目詰まりや焼損のリスクが出てくる
何より公道で走らせる限り、備え付けの排ガス浄化装置の機能を殺すのは不正改造となる

多くの純正ECUも、最高出力付近の高回転域での運転時や、
スロットル急開時のように回転数に対してスロットル開度が過大となった際には、
焼き付き・失速の防止と出力発生を優先するため、一時的に燃調を濃くしているものだけど、
低回転域から巡行時の常用回転域までチューナー側が手を出したり、
高回転域で純正以上の増量供給をするとなると、話が変わってくる

社外ECUや割り込み制御器の場合、設定自体はPCやスマートフォンなど、
ありふれた電子端末のアプリで簡単におこなえるものが多いけど、
きちんとしたセッティングの解が出せるかどうかはチューナー次第、それなりに難しい
それでいて触媒にはダメージを与えず、純正と同程度に機能させるとなると、なおさらだ
本格的に煮詰めようとするなら、空燃比計などのツールが必要となるだろう

社外マフラーもいくつか出ているようだが、吸気側までセットとなった製品はまだ見たことが無い
下手に手を出さないほうがいいように思われる
強いて言うならフルエキで、エキパイの長さを充分にとって排気慣性を稼いだ仕様のものなら、
エアクリ周りが純正のままでも、あるいは・・・?



日本仕様車は騒音規制をクリアするため、タイ仕様や欧州仕様に対して、
ドリブンプーリーの部品変更によって加速中の使用回転数が抑えられているという説もある

しかし日本仕様トリシティの騒音規制値と測定方法には、
国連欧州経済委員会のR41-04規則、国内で言うところの平成26年規制が適用されており、
他の仕様に対して甚だしいデチューンが施されているとは考えにくい

自分個人の乗車感覚はあまりアテにならないが、
特に谷間も無くスムーズに速度が伸びると感じる
同一の仕様か、もし異なる部品を使用していたとしても、そう極端な仕様ではなさそうである

H13・22規制の理不尽さから連想されて広まった誤解、
現代バイク乗りのトラウマに由来する都市伝説という見方もできる
・・・というのはちと大袈裟か?



※追記
2015年10月14日
社外マフラーについて追記
2016年9月25日
タイトル変更、内容一部改訂
2016年10月2日
一部追記
2016年10月31日
一部追記・修正
2016年11月16日
2017年型トリシティ125の発表に合わせて加筆
2017年10月24日
一部加筆