2016/09/16

祝・トリシティ純正互換タイヤ発売の巻(IRC:モビシティ)

前輪は偏平率80%を満たすものが無い
後輪はリア装着指定のものが無い

そんな状況が長らく続いていたトリシティの足回り事情ですが、
このたび、幅・偏平率・ホイールサイズ、荷重指数から速度記号に至るまで、
完全に純正互換サイズのタイヤが発売されました
こいつはメデタイ

メーカーどこ? ピレリ? それともミシュラン?
残念、IRC(井上ゴム工業)でしたー
こんな書き方したら訴訟されるぞ、オイ

公式サイト「IRC MOBICITY SCT-001 シリーズ」
モビシティ」・・・トリシ・・・なんか紛らわしいぞ!?

・フロント
IRC No.129883 90/80-14 M/C 43P TL

・リア
IRC No.122509 110/90-12 64L TL

この2つがジャストフィット

俺自身は特に欧州メーカー信仰があるわけでもなし、
IRCが小~中型二輪車用や自転車用、車イス用といった、
小規模乗用機器向けバイアスタイヤの分野で活躍している企業だということも知っているけど、
ホンダ・PCXに純正装着されているSS-560系の評判が非常に悪いので、
原二向けスタンダードタイヤに限って言えば、どうしても一抹の不安が拭えないんだよな・・・
公式ページ中程のドライ・ウェット性能評価表の比較対象もSS-560だし、
ドライ状態とウェット状態でテストスピードが異なるし、
16年9月16日時点、ウェット側の表の下部で、「ウェット路面」を「ドライ路面」と誤植しているし・・・
9月25日の時点で、誤植は修正されていました
ひょっとしてこの投稿、関係者さんに見られていたりするんだろうか・・・いや、まさかね・・・

とはいえ、ほぼトリシティ専用と言えるサイズをわざわざラインナップに加え、
下部の走行イメージにもトリシティを登場させているあたりは絶対狙ってやがる気概を感じる
それなりに力を入れて開発して、自信を持ってリリースしたものなんだろうなぁ、と
選択肢が増えることは、ユーザーにとってとてもありがたいことなのは間違いない

純正装着品のチェンシン/MAXXIS製タイヤも"純正タイヤとしては"そう悪くない部類だけど、
次に履き替えるときはおそらくこのモビシティを選ぶことになるでしょう
まだ総行1万kmにも達していないので、だいぶ先の話だけどね
総行13,095kmで履き替えました
くわしくはこちらへ
タイヤ交換完了・トリシティにIRC SCT-001 MOBICITY を装着



※補足1・純正装着タイヤに関する俺の考え方

スポーツ用ハイグリップ品に対して絶対的なグリップ限界が低いのは妥協するとして、
調達原価が安い、トレッドが摩耗しにくいのはもちろん、酷暑下でも熱ダレを起こさないこと、
酷寒下やウェット路面でもグリップ特性の変化が抑えられていること、
トレッドの摩耗進行に見合ったコンパウンド自体の寿命を持っていること、
そして何より、グリップ限界が近づいた場合の兆候がわかりやすく、
そこから本格的にグリップが破綻するまでの余裕がいくらか確保されていること
これらが大切だと思っています

適性温度ではハイグリップでも、その温度域から外れると急に特性が変化するようなタイヤや、
サイドウォールにヒビが出ているのにまだまだ溝が残るようなタイヤは、好きではありません



※補足2・タイヤのグリップに関する備忘録

高校数学や物理ですらパンクするレベルのポンコツ頭なので、
いろいろ間違えている部分があるかと思いますが・・・どうか笑ってやってください

タイヤは一見、接地面の全体が完全にグリップしているようですが、
強い駆動力ないし制動力をかけている、
=接地面に対して輪軸に直角な向きの強い摩擦が発生している状態では、
タイヤの弾性などの影響で、車輪外円周の速度と車両本体の速度に差が生じる
(この差を、車両速度に対する割合として表したのが「スリップ率」)ほか、
路面と変位せず固着している=グリップしている部位と、
路面と相対的に変位している=スリップしている部位が、
共に接地面の中に存在しています
グリップ部位と路面との間には静止摩擦力が、スリップ部位には動摩擦力が作用しています

駆動力・制動力を許容限界に近づけていくと、グリップ部位の静止摩擦力が高まる一方、
接地面に占めるグリップ部位の割合が減っていき、逆にスリップ部位の割合が増えていきます
接地面全体の合計摩擦力を、縦軸が摩擦力、横軸が負荷する駆動力もしくは制動力、
左下が原点で右上がりの線グラフに表すと、
低負荷域は直線的に増加しますが、中負荷域以降では増加率が落ちて曲線を描くようになり、
負荷限界付近では伸び悩みから頭打ちをむかえ、限界を超えると下降に転じます

死重の搭載や空力によるダウンフォースの発生、あるいはブレーキワーク・スロットルワーク、
二輪車の場合はライダーの体重移動によって、タイヤにかかる荷重を増やしてやれば、
垂直抗力の増加と、接地面のグリップ部位からスリップ部位への遷移を遅らせる効果によって、
摩擦力を増加させる=グリップ限界を高める効果が得られます
が、これにもトレッド表面の耐せん断限界などの制約があり、
荷重を2倍に増やしても、摩擦力は単純に2倍になりはしません
こちらもタイヤが許容できる限界に荷重が近づくにつれて、
摩擦力の向上は曲線的になっていき、限界手前では伸び悩むようになります

また、タイヤにかかる荷重や摩擦は、加減速によるものだけではありません
二輪車の場合、例えば高速コーナーリングでタイヤの摩擦力を多く使っている状態で、
スロットルを開きすぎたり、逆に急に全閉したりすると、後輪のグリップが破綻します



※補足3・SS-560の悪評についての考察

実は補足2は前置き、ここからが本題

晴天下でのPCX試乗数回と、各所のレビューを見た・経験した限りでの話ですが、
グリップ限界そのものは、125ccスクーターの純正装着品として標準的なレベルのようです

ただし、グリップ限界前後の摩擦力の変動特性に難があるようで、
接地面のグリップ部位→スリップ部位への遷移が急、
感覚的には「スキール音の発生から間髪を入れず唐突に滑り出す」性格となっており、
これが「とにかく滑るダメタイヤ」という評価に繋がっているものと考えられます
正確には、「限界域付近でのコントロール性がダメ」なのでしょう
摩擦係数が低下しがちな雨天時などは、特に神経質な性格として感じられるのだと推察します

さらに、PCXが余裕のあるバンク角と底力のあるブレーキシステム、
特に強力なフロントブレーキを備えていることが、
余計にこのタイヤの問題点を浮き彫りにしているのではないでしょうか
とりあえず「後輪に低転がり抵抗タイヤを採用しました!」ってドヤ顔しちゃうホンダは、
明らかに付加価値の盛りどころを間違えていると思うよ・・・

※追記
2016年9月20日
投稿タイトル変更、一部追記
2016年9月24日・25日
一部改訂
2016年10月16日
一部修正
2017年4月15日
一部修
2017年8月23日
続編へのリンクを追加